第8章: かけがえのない同居者たち: 小章2

別人格との日常

多重人格の症状は
私の日常だった。

それは山暮らし前から
始まっていたことで…。

あれが得意なA君。
それが得意なB君。
そっちが得意なIちゃん。

私の中には
今でも
はっきりと自覚できる人格が
私を含めて4人いる。

今までは、それぞれが
場面に応じて入れ替わり
得意なことをやってくれていた。

だから全体としては
まとまりのない性格だった。

それでも私は困ってなかった。

別人格が
代わりにやってくれるんだから
いいと思っていたから。

自分が困ってなかったことも
主治医に打ち明けなかった
理由の一つだと思う。

でも、去年の秋頃、症状が悪化し
人生で3度目の自殺を図った。

その立ち直りの過程で。

これは
多重人格のことも
主治医に伝えなければ危険だ
と、判断した人格がいた。

自殺未遂のショックで
私本人は深く眠ってた。

そこで、一番冷静な人格
(主治医に伝える判断をした
 人格)が
全人格を代表して。

主治医に手紙を書いた。

ひどい状態が続いているのを
見ていた主治医は。

ある日私が
「状態をまとめてきました」
というと。

「ええ?
 まとめられるような状態なの?」
と少し驚きつつも
私(別人格)が書いた資料に
目を通してくれた。

そして、静かに
なるほど…と頷いてから。

今までとは
治療方針が全く異なります。
と言葉を続けた。

多重人格の治療は
行っていない病院も多い
と聞いていたので。

主治医のその言葉は。

この先生に
引き続き診てもらえるんだ
…という安心感を私の中に
もたらした。

そうして今は、その病と共に
静かに暮らしている。

そんな日々の中
私を支えてくれた
大きな存在があった。