私はもともと猫が好き。
特に黒猫には
昔から不思議と縁があって
過去にも飼ってたことがある。
また黒猫でなくても
道で猫に出会えば
必ず話しかけてる。
願掛け
山に移る直前のある日
ふと思い立って。
「金目の黒猫と出会いたい」
と紙に書いて
それを部屋の目立つところに
貼っておいた。
山での猫との生活は第5章で
詳しく話してるので
猫との出会いについて
ここで触れておく。
それは山での出来事だった。
ある日の昼間
ふと気配を感じて土間を見た。
「にゃあ?」
と、小さな声とともに
顔をのぞかせたのが
その猫だった。
全身真っ黒…ではなく
黒い体に
白い靴下を履いたような足元
額にはハチワレ模様。
私はひと目見て「来た!」
と思った。
あの紙に書いた願いが
本当に届いたのだと思った。
暮らす
猫の餌の用意なんて
してなかったから。
手元にあった
ソーセージやベーコンとか
猫が食べそうなものを
とりあえずあげた。
なんとしても、うちの猫に
なってもらいたい気持ちで
いっぱいだった。
すると
猫も家や私を気に入ってくれたのか
そばに寄っても逃げずに
触らせてくれた。
猫の感触。
あのスルスルとした
すべすべとした感触。
その日のうちか次の日には
猫の餌や猫用の器を
買ってきたと思う。
猫は当たり前のように
私の住まいを
自分の住まいと認識した。
それから猫との同居生活が始まる。
それは
ただの猫じゃなかったことは
第5章でも触れてる。
でも、それとは違った意味で
私はこの猫を特別に思ってた。
猫を自分の子供のように
感じていたから。
唯一の家族ができたのだと思えた。
それから
ずっと一緒に山で暮らし
両親との再同居の際
悩みながらも一緒につれてきた。
同居中
親の振る舞いに
孤独や虚無を感じても
猫がいた。
猫がいたから
幸せでもあったのに。