第6章: 家族という名の他人: 小章3

父と母の外側で

姉はすでに他界してた。

姉がいれば、私はこの家に
必要とされなかった
…のかもしれない――。

そんな思いが、ふと胸をよぎる…。

そして
若い頃、犬猿の仲だった父と母は
とても仲良くなっていて
それを見た私は
ものすごく戸惑った。

両親の状態としては
母は、認知症があり車椅子生活。
介護が必要だった。

父もパーキンソン病を患っていて
手足の震えが見えた。

父と母

若い頃の
父母からは考えられない光景を
いくつも見ることになった。

たとえば
父が母を介護している姿。
母が父に甘える姿。

母が箸で食べ物をつまみ
「あーん」と言って父の口に運び
それを
父が嬉しそうに口を開けて
食べる光景──。

そんな父母の間に、私は
割り込んで入ってはいけなかった。

私は、父母と
食事も一緒にしていなかった。

父母が居間で
仲良く食事をしている中
私は台所で一人食べていた。

そういう時には
私は単なる
介護要員として
迎えられただけななのでは…?
と、感じてた。

父の入院

母の介護は
父と共同でしてた。

でも半年後くらいに、父が
急性の腰痛で動けなくなり
入院することになった。

母には、施設の短期入所を
繰り返してもらった。

そのあいだ
私は息をつく間もなかった。

父は
3ヶ月ほど入院して
ほぼ歩けるようになって
帰ってきたけど。

パーキンソン病が
進んでいたこともあって
介護が必要になってた。

父は猛反対したけど
母には
施設に入所してもらうことに…。

私にも
罪悪感はあったけど
自分が潰れるという思いがあった。

母が施設に入所したことで
父と私、ふたりの
同居生活が始まった。

私が子供の頃から
父は家庭内別居をしていたから。

父とはまともに話したことがなく
実の父だと言うのに
知らない人のように
感じてしまう自分がいた。

ふたりきりになって
どう接したらいいか
距離感がぜんぜんわからなかった。

身内だと思うと
心が崩れそうになる中で
「この人は
 介護が必要なただの老人で
 他人」
と思うことで
切り抜けようと思った。

私の中で
すでに病が再発する
兆しが見えていたのかもしれない。