第5章: 宇宙からの贈り物 ~山との暮らし~: 小章4

猫との共生

山で
暮らすようになってから
私のそばにはいつも猫がいた。

猫はただのペットじゃなかった。

仲間であり
時には先生であり──。

何よりも山での生活を
一緒に生きる
〝同居人〟だった。

エサはあげていたけど
自分にとって必要な栄養は
自分で狩って摂る──。

そういう主義の猫だった。

野生の王

ネズミや鳥
リス、ウサギ──。

そしてなんと
ヘビまで捕まえてきた。

モグラやカエルも
獲っては来たけど。

ヘビやモグラ、カエルは
獲るだけで
食べることはしなかった。

好んで食べていたのは
やっぱりネズミと鳥。

それからリス。

生餌を食べているときの猫は
ちょっと怖い。

野生丸出し…。

一番ひぇ~と思ったのは
野ウサギを獲ってきたとき。

自分の体と
同じくらいの大きさのウサギを
しっかりくわえて
お持ち帰りしてきてくれた姿は
もう「野生の王」だった。

猫的には
〝テンションマックス〟
のようだったけど
私的にはスプラッターな光景に
とても腰が引けたのを思い出す。

猫は
食べるだけじゃなく
遊ぶためにも獲ってくる。

だけど
遊んでいるうちに
獲物を見失うことも多かった
(そして それを捕まえるのは
 人間の仕事…)。

捕まえそこねた獲物たちは
屋内でしっかり繁殖する。

ある時
猫がリスを獲ってきた。

リスは放たれ
屋根裏に逃げ込んだ。

もちろん猫は
そこまで追いかけたけど
見失ってしまった。

そうしたら
いつの間にかそのリスが
屋根裏で繁殖してしまい…。

時々
猫が屋根裏に上がっては
リスをくわえて
帰ってくるようになった。

屋根裏が
猫の狩り場と
化してしまったのだった。

母としての猫

そんなワイルドな
一面とは別に
猫は母としての顔も
持っていた。

お産も育児も
猫はきちんとこなしてた。

育児は
猫と人間の分業制だった。

狩りの仕方を教えるのは親猫
トイレのしつけは私だった。

親猫は基本外トイレだったけど
まだよちよち歩きで
外に出られない子猫のために
おうちトイレを
教える必要があった
(もちろん人間のために…)。

3ヶ月ほど経った。

子猫もいっぱしの
猫っぽくなってきたある日。

親猫が子猫たちを連れて
外に出かけた。

1週間くらい
帰ってこなかった。

戻ってきた時
ふと気づくと子猫が1匹いない。

「迷子になったのかな?
 可哀想に…」
と思っていたけど。

2度目、3度目と
出かけるたびに
1匹、また1匹と減っていった。

3度繰り返された時
私は強く思った。

これは
猫が自分で子猫を
まるで里子に出すかのように
どこかに置いてきているのだと。

にわかには信じがたかったけど
疑う余地はなかった。

それは
全部の子猫がいなくなるまで
繰り返されたから…。

他にもこんな話がある。

避妊手術をしようとした矢先
猫がぱったり帰ってこなくなった。

そして数日後
何事もなかったかのように
戻ってきたのだけど。

よく見ると
お腹に手術の痕がある…!

「……え、え?ええー??」
と混乱した。

周囲に民家なんてなかったし
近所に人の気配もない。

でもたしかに手術はされてた。

結局それはやっぱり
避妊手術の痕だったのだけど。

謎…。
こればかりは
今でも謎のまま…。

うちの猫は
ただの猫じゃなかった。

宇宙からの使者のような
不思議で誇り高い存在だった。