第5章: 宇宙からの贈り物 ~山との暮らし~: 小章3

山からの教え

山の暮らしは
雪だけではなく
薪割りや薪拾いとともにもあった。

お風呂を
薪で沸かしていたから。

薪でも灯油でも
沸かせるタイプの釜だったけど
薪で沸かしたお湯のほうが
断然やわらかい。

湯に浸かってると
その違いがはっきりと分かる。

だから
よほど面倒な時以外は
薪を使ってた。

贅沢な時間

お風呂は夏なら
段ボールで十分に沸く。

スーパーで
お持ち帰り用の
段ボールをいくつかもらってきて
それで沸かしてた。

段ボールでも薪でも
最初から全部を
放り込むわけではなく。

まずは紙くずや
細かい枝に火をつけて
火の様子を見ながら
少しずつ細い薪から
足していく。

太めの薪をくべたら
お湯の温度や火の勢いを見て
必要なら釜の中の
薪を並べ替えたり
足したりもする。

当然薪作りも
暮らしの一部だった。

太い木は大きな斧で割って
次にそれらをナタで細くしてく。

薪の太さは
釜に順番にくべていけるように
何種類か用意してた。

毎日の作業が
自然の筋トレになって
必要な筋力がついた。

そして
家のまわりはヒノキの森!

だから薪もヒノキ。
つまり
ヒノキの薪で沸かすお風呂。

そして水は
富士山の湧き水──。

そんな贅沢、なかなかない♡

実際、里の人たちが
水を汲みに来たり
ヒノキの薪を
持って帰ったりしてた。

学んだこと

暮らしの中で学んだこと
気づいたことは
ほかにもたくさんある。

たとえば
薪はしっかり乾いていないと
使えない。

生木は燃えないし
煙ばっかり出る。

そういえば
煙で思い出したけど
囲炉裏もあった。

バーベキュー用の
安い炭を入れたら
家中煙でモクモク(笑)。

でも
「虫よけになるかも?」
と思ってまあいっかと思った。

そして夏は涼しかった。
クーラーが必要ない。

山の空気が
気持ちよくて。

でも、そのぶん
冬はストーブ必須。
ずっと焚いてた。

雪が少ない冬は
夏に虫が多くなる──。

これも暮らしの中で
学んだこと。

そして
山(富士山)に雪が少ない年は
なぜか里に雪が多い。

毎年観察してて気づいた
不思議な法則。

こんな事があった。

ある冬の雪の多い日。
今でも忘れられない光景…。

木の枝が
雪の重みで静かにしなっていく。
折れそうで折れないまま
じっと耐えている。

けれどある瞬間
しなりきった枝は
バササッと勢いよく
雪を振り落とし
元の姿を取り戻した。

ハッとした。
自然って、すごい。

こんなことを
こともなげにしてのける。

誰に教わるでもく
してのけるのだ。

なにか
大切なことを
見せてもらった気がした。