そうして始まった
山の暮らし。
雪に関する話は
いくつもある。
雪が降ったら
雪が積もれば
それは生活に直結する。
車が出せなくなり
買い出しにも行けないから。
だから雪が降りだした時には
積もったときに備えて
すぐに車を
林道から公道へと
下ろさなければいけない。
それがたとえ
夜中であろうと。
なにしろ除雪車が入るのは
公道だけだから。
遊び心満点
雪が積もると
やることは決まっている。
まずは雪かき
何をおいても雪かき。
1時間以上もかかる作業だけど
(広いから)
ただ実はこれがなかなか楽しい。
いや、本当に。
何が楽しいかって
ひたすら無心になれること。
そして雪を掘っていくと
下のほうがちょっと
青みがかっていて
それを見るのが好きだったこと。
雪かきが終わったあとには
〝やったー感〟で満たされること。
雪かきが終わったら
ひと休み…じゃなくて
次はそり遊び(笑)。
林道が
ちょうどいい傾斜になっていて
自然のゲレンデみたいになってた。
そりで座って滑るだけじゃなくて
立って乗ったりもしてた。
スノボーっぽく。
ゆるく曲がりくねった林道を
スワーッと音を立てながら
下っていく。
そして派手に転ぶ。
それも含めて楽しかった。
雪が
新しく降り積もった直後なら
そり遊びもその遊び方で
存分に楽しめる。
でも何日か経って
林道に轍(わだち)ができて
それがガチガチに凍ると…。
今度は遊び方が変わる。
そりをその凍った轍に沿わせて滑る
〝ボブスレー方式〟だ。
これがまた
びっくりするくらい
スピードが出る。
林道の曲がり具合が
スリルを増してくれる。
そりが轍から外れようものなら
勢いよく横転して
体がズザザッと氷の上を滑る。
でもそれすら楽しくて
毎回ひとりで笑ってた。
よく怪我しなかったなって
あとから思う。
雪との格闘
ただ
雪が楽しいのは
あくまで自分の意志で
〝遊んでいる〟ときだけ。
そうじゃないと
笑いごとじゃ済まされない
こともある──。
ある雪の日のこと。
林道を車で走ってたら
ほんの少し
タイヤが側溝に
ハマってしまった。
直角に。
いけるかもと思って
四駆に切り替えたけど
滑って動かない。
ボロ布を
タイヤの下に敷いても
効果なし。
思い出したように
チェーンをつけようとしたけど
普段ほとんど使わないから
手間取ってしまって…。
説明書も雪に埋もれていくし
自分にも雪は積もっていく。
1時間近く
格闘している間に
気づけば辺りには
20センチ以上の
雪が積もってた。
工夫(格闘)の末
車を無事脱出させられたけど
自宅のすぐ近くだったのに
本気で「これ、遭難するかも…?」
と思った。
でも
案外楽しんでいる自分も
いたかもしれない。