act01: 原点: sec04

愛と哀

ある日
レナはアレイアに言った。

「お姉様。
 私も、子をなしたいと思います。
 何故(なにゆえ)に
 私には、子をなす大地が
 ないのでしょうか?」

「かわいい妹よ。
 あなたは、今
 それを嘆いてはなりません。
 あなたに芽生える愛情は
 いずれセカイに満ちるのです」

「……」

「あなたが今、なさないのは
 それが、私の役目だからです。
 私たちは
 同じソラから、生まれましたが
 同じ存在(もの)ではありません。
 だからこそ
 こうしていられるのです」

「…。お姉様。
 私もアリオンに愛されたい」

「あなたの抱く感情は
 いずれ
 アリオンに伝わるでしょう。
 そうしてセカイが満ちるのです。
 あなたは信じて
 あなたでいれば良いのです」

「……」

レナは、うなずいた。
アレイアの真理にうなずいた。

けれど、レナの哀しみが
癒えたわけではなかった。

そして、レナは
アリオンに言った。

「お兄様。
 私にも、子を授けてください」

「…。私の種があっても
 今は、おまえに子はならない。
 それは
 アレイアの役目だからだ。
 ソラに、同じモノは
 2つと存在しないのだ」

「お兄様。
 私もお兄様に
 愛されたいのです」

「おお。私のかわいい妹よ。
 何故(なにゆえ)に
 そのような事を言うのか?
 私は、おまえを愛している。
 この上なく愛している」

「お兄様」

レナは
アリオンの胸に身を寄せた。

「レナ。かわいい、妹よ。
 なぜ、泣くのだ?」

「お兄様。
 愛しています。愛しています」

「レナ。
 何故(なにゆえ)に泣くのだ?
 何がおまえを
 悲しませているのだ?」

「……」

アリオンは感じた。
はっきりと感じた。

アレイアに抱く感覚とは
別の感覚を…。

この妹を慈しみ
己の内(うち)に抱きたいと
願う自分…。

それは、アリオンにとって
未知なる力だった。
絶大な熱き力だった。

だから、アリオンはしなかった。
だから、アリオンはできなかった。

だからいつも通りに
レナを愛した。

だから、レナに
子はならなかった。

時は過ぎた。