畠さんは
手元のグラスで
カラカラと音を創って
〝話の時〟を計っている…。
それは
いつもの畠さんの癖で
話し出すタイミングを
自分のスケールで計るのだ…。
…からん…。
僕は。
クリムソンを飲み干した…。
「アッドしなよ」
ちゃり…。
畠さんが
クラスチップを
カウンターに置いた。
「まだいけるだろ?ダブルぐらい」
「ダブルで話…終わるのかよ?」
「おまえ次第だね」
「何が?」
「どこまで聞く気があるか…さ」
「…。どこまでも…何も…。
まだなんの話も
出てない…じゃないか」
「待っているのさ」
「何を?」
「途切れるのを…」
「え…」
「……」
「…何…?」
「……」
「…なんだよ…?」
「—。傍受(ワッチ)さ」
「え…ッ」
「—。わざわざカナンまで
来ていると言うのに。
まったく不愉快極まりないよ。
他人に脳波を覗かれるなんて
事は」
「…ワ…ワッチって…」
「……」
「覗かれるって…?」
「……」
「…脳波っ…てなんだよ?」
「—。なんだ。おまえ。
まったく見当ついて
いないのか?」
「…?」
「作品だよ。作品漏洩」
「あ?!」
「……」
「…で…でもっ。なんで…?
え…って。じゃあ…。
僕の脳波をワッチして
見たって言うのか?なんで?
誰が?!」
「感情を荒げるなよ。
またワッチされる」
「…そ…ッ」
「ダブルで良いな?」
畠さんはそう言うと
シェーカーにオーダーを通した。
なんで?
どうして?
何が…。
…誰が…。
なんで僕の作品を…?
僕の頭の中に
〝?〟が飛び交った…。
「何のためかは知らん。
だが。ワッチしたやつらは
見当がつく」
「誰?!」
「—。だからそれを気を付けろよ?
受けたものをそのまま出すな。
少しはコントロールしろ」
「~~~~~」
「無愛想も然り。
〝上手く見せる〟ことを
少しは学べよ?まるで筒抜けだ」
「そ…そんなこと言ったって。
僕はこのままなんだ…。
何をどうすればいい…」
「まあ…。とりあえず。
にっこり笑ってみてはどうかな?
トモクン」
「…ふざけるなよ。
人が真面目に…」
「真面目だぞ?俺も…」
そう言って畠さんは
顎でしゃくって
僕の斜め後ろを示した。
「…?」
「脳波をワッチされなくても
会話を直接聞かれることも
あるさ。まあ。当然だな」
「……」
「がら空きだ。おまえの背中は。
危ない危ない」
「…~~…」
そう言って
畠さんは再び
グラスを傾けた…。