かつん…。
「……」
立ち止まった僕の目の前にある
マスカットのゲート・ボール…。
これを抜ければ
…G-7…。
通称:カナン…。
カナンは未だ整備途中で
しかも現在
一番整備が遅れている区画だ。
だが
この区画こそ将来
〝最も祝福される地〟
…として
神から約束されている…。
そしてその時
そこに住むことを許される人たちは
今のエデンで規定の生活をこなし。
〝神の最後の判決〟まで
その態度を
一度も怠らなかった人たち…。
その人たちには
カナン での
〝至上の幸福〟…という希望が
堅く約束されている…。
その〝神の最後の判決〟が
いつなのか
それは誰にも知らされていない。
だから
誰がカナンに行けるのかも
わからない。
だが。
…もし…。
カナンへの入場が
許可されなかったとしても。
次的な基準として
現在のエデンは存続するから
誰もが
今より不幸になることはない…。
むしろ
カナンが完成し
カナンに住む人々が選別され
その人達がカナンに入った
その時こそが
〝神の世界の全なる完成〟
…とされているから。
現在エデンに住む人たちは
たとえ自分が
カナンに行けなくとも
今以上に幸福になることに
希望を持って生きている…。
だから皆…。
互いに励ましあって
その時を待っているのだ。
現在 カナン は
レッド系の
単色スケールのみが存在し
整備に携わる
ロア・クラスの住居区も
兼ねている。
そのため
ロア・クラス以外の人間には
色感覚刺激が強すぎて
特に、アッパー・クラスの人間は
立ち入らないのが一般的だった…。
…ちゃら…。
僕はポケットから
クラス・チップを取り出し
ゲート・ボールにある
ソーサーに入れた。
…かしょ…。
かしょしょしょん。
…ぴー…。
— あなたは —
— ロア・クラスではありません —
—– 入場を希望しますか? —–
——- はい?/いいえ? ——-
確認のメッセージが流れる……。
<はい>
タッチ・パネルから。
回答を入力する…。
ウィィィィィン…。
— 面会希望者があれば —
—— お探しします ——
< クラス = “IB” >
<氏名 = " Hata Akatuki" >
<確定 >
ウィィィィィン。
♪♪シャラララン…フウフウ…ラルラ…♪♪
♪♪♪シャラララララ……フウフウ…♪♪♪
♪♪♪シャラララン…ラルラ…♪♪♪
♪♪♪シャラララ・ラン……♪♪♪
—– クラス = “IB” —–
— 氏名 = “Hata Akatuki” —
—— を認識しました ——
— 表示される矢印に沿って —
—— お進みください ——
— お心に感謝します—
認識音がした…。
僕は、目の前のゲート・ボールに
手を伸ばした。
す…すすすす。すす…。
「…つっ…」
視界が一瞬…
マスカット1色になった時…。
…全身に
痛みに近い…疼き…が
…走った…。
すすすすす。すぅー。
…そして…。
目の前に広がる…。
…赤の…世界…。
カナンに来ると
いつも感じる
…この…疼き…。
赤…。
…どくり…と鳴る…心臓…。
「…は……」
…浅い…息…。
…あ…れ…?
いつもより…きつ…い…?
いつもなら…もう…。
…あ…。
今日…は…。
…鳴りつづける…。
心臓…。
…足元には
畠さんの居場所を案内する
矢印が見えている…。
だがそれに着いて
すぐには歩けだせそうにもない…。
「……」
それどころ…か…。
…立って…いるの…さ…え…。
僕は仕方なく
近くに積み上げてあった
レンガ色のブロックに
身を預けた…。
「………」
…なん…だ…。
今日は…長い…。
「…ふ……」
僕は…目を…閉じた…。
どくん。
…どくん。
どくん…。
鳴りつづける
…鼓動…。
…どくん。
どくん。
……どくん。
「は…」
息が…上がる…。
…こ…れじゃ…畠さんを…。
探すどころ…じゃ…。
…じゃり…。
その時僕の近くを
人が通る気配がした…。
僕は…目を開けた…。
「……」
突然
…視界に飛び込んできた
インディーゴ・ブルー…。
…強烈な…。
感覚の…。
…ギャッ…プ…。
「…ぅ…あ…」
た…た…おれ…る…?
がし。
「……」
誰かが
倒れかかった僕の腕を掴んだ…。
それから…。
「ばか。
いきなり
目を開けるやつがいるか」
頭の上から声がした…。
僕は
…ゆっくりと目を開けた…。
倒れかかった
僕の腕をつかんだのは
畠さんだった…。