Act02: 神威: section05

風景Ⅱ

C-1の商店街のまん中辺りに
〝プラットホーム〟がある。

プラットホームは
エデンに住む人々の
私的な交流の場所だ…。

1階は飲食店街で
レストランや
洒落たティー・バーなどが
ずらりと立ち並ぶ…。

2階には雑貨や衣料品
アクセサリー店などがあり。

3階には劇場や映画館
ゲ-ムランドなどの
娯楽施設があって。

シャッバート・イブ には
結構にぎわう…。

それから地下3階には
区画と区画の間を結ぶ
〝ライナー〟が乗り入れていて。

スクールやヒーリングセンター
あるいは会所や作業所などへの
移動手段として
人々に利用されている…。

エントランスを
少し歩いていくと
そこには
〝落ちる水のオブジェ〟がある…。

ざーざー。
…ざーざーざー…。
ざー……。

聴覚に…。
響いてくる…。

ざーざーざー…。

…上から下へ…。
上から下へ…。

…ざー…。

落ちる…。
…流れる…。
水の…オブジェ…。

「……」
この
落ちる(流れる)水の
オブジェのことを
〝滝〟と呼ぶのだと…。

…いつだったか…。
畠さんが…。
言っていた…。

その時、畠さんは
僕の姓と同じ
〝滝〟という響きに
〝記憶〟はないか…と言って…。

「……」

…っと…。
思考にハマってる
場合じゃなかった。

僕はその畠さんから
会所に呼び出しを
食らってるんだ…。

遅くなりかけた
歩速を戻して
僕は視点を上げた…。

視界の奥に
エレベータ・ホールが映った。

エレベータ・ホールには
エレベータが3機並んでいる。

僕は
左端のエレベータに近づいて。

…ぷち…。
コール・ボタンを押した…。

ぽーん…。

まもなくして
到着予定ランプが点灯した。

僕がドアの脇に立つと…。

”きゃらきゃら…。”
“ぺちゃ。くちゃ…。”

背後から話し声がした。
「……」
エレベータのドアに
寄り添う男女の姿が
映っている…。

恋人…同士…?

”あ~ちゃん。昨日
 ヒーリングセンター行った?”
”行ったよ。もう。すっきりだ。”
”良かったね。でも。
 どこがいけなかったのかな?”

”う~ん。なんかな。
 良くわかんないけど…。
 ちょっと、昔のこと
 思い出しかけてたみたいで…。”

”ええっ。そんなの大変。
 だって。私たち。
 昔のこと忘れたから。
 善い人になれたんでしょ?
 だから。エデンにいられるのよね?
 そう。習ったわ。”

”そうだよ。だから。
 平和でいられるんだよ。
 みんみん。感謝しような。”
”うん。みんみんはね。
 毎日感謝している。お祈りして。
 EDENの神様に。”

”そうかぁ。みんみんは。
 えらいな。きっと。EDENの
 神様も。喜んでおられるよ。”

…きゃらきゃら…。
ぺちゃくちゃ…。

…あぁ…。
思わず聞いちゃった…。

ゴォウゥゥン…。
ちぃーん。

…来た。

目の前で
エレベータのドアが開く…。

僕がエレベータに乗り込むと
後ろの二人も乗り込んできた…。

ヴィン…。
ゴォゥゥン…。

ドアが閉まる…。

…ひゅ…。
……ぃぃぃぃぃ…。
…ぃぃぃぃぃ…。

密閉体の落下音に
鼓膜が振動する…。

…ぃぃぃ…。
……ぃぃぃぃぃ…。
…ぃぃぃぃぃ…。

…ぼそ…。
ぼそぼそ…。

…?
…ひゅ…。
ぃぃぃぃぃ…。

ぼそぼそ…。

…ぃぃぃぃぃ…。

ぼそぼそ…。
…ぼそ…。

落下音に紛れて
聞こえてくる…。

ぼそぼそ…ぼそ…。

…話し声…か…。

…ぼそ…。

”…~ちゃ…。あの人。
 女の人…思う?”

…ぼそぼそ…ぼそ…。

”… うん…?…乗ってる?
 ブルー・ク…の…?”
”…ん…見た?す…ごく…奇麗な人…。”

…ぼそ…ぼそ…。
ひゅ…ぃぃぃぃぃ…。

”見…けど…。男じゃな……?
 だ…て…ブルー・クラスの…は
 希だって聞いたぞ?”
”あ…そうかぁ…。でも…。”

…ぼそぼそ。
ぼそ…。

…聞こえてるんだよ(内容が)…。
それで内緒話のつもりか。

……ぼそぼそ。
…ひゅ………。
………ぃぃぃぃぃ……。

”…の人…だよ……。絶対…。”
”女…かなぁ…だった…ごい美人…。”

~~~~。
男だよっ
男!

なんで
どこが
女に見えるー?!

ちぃーん。
…あ…。

が…くん…。
着いた…。

ごーっ。
ドアが開く……。

「………」
かつっ。

僕は少しわざとらしく
足音を立てて
エレベータを出た…。

…と…。

— ポーポーポーポー —
— HSL ライナーが到着します —

ライナーのアテンションが流れた。

ライナーは無人運転だ。
ゲート・プレートに
反応がなければ
素通りしてしまう。

僕は急ぎ足で
一番近くのプレートに足を乗せた。

ご、ご、ご…。

ライナーが入ってくる …。

…ご、ごごご…。
ごごごごごぉぉぉぉ…。
…ぉぉぉぉぉ…。
ぷしゅ…。
ぷしゅしゅ…。
…しゅぅぅぅぅぅぅ…。

ライナーが止まった。

— このライナーは —
— HSL ラインです —

アナウンスが流れて
ゲートが開く…。

かつかつ…。

僕が乗り込むと
二人連れも乗ってきた。

— 発車します —

ぷしゅーっ。

ドアが閉まった…。

がっくん…。
ゴー。

走り出す…。

…ウィンドウの外に。
流れる…。
…色…。
アクアの…。

…あ…。
また…だ…。
…また…。
欠片…が…。
…色の…。
色…。

…これは…。
これ…は…。
な…に…?

これ…は…。

…タ……。
キ…?

…滝…?
何…?
…畠…さ…。

…過(よ)ぎる。
過(よ)ぎる。
…過(よ)ぎる…。

あ…。
畠さん…が…。
…何か…言って…る…?

あれ…は…僕…?
…カ…カズオ…センセイ…。

誰…?

あ…。
…あ…。
あ…。

だ…だめだ…!
だめ…!

あ…アカツキ…!
わぁっ…。
…ぁぁぁぁぁぁぁ…。

僕の脳裏に
聞きなれない僕の声が響いた…。